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バックミラーはスロースピードでの車庫入ればかりでなく、普通に走っているときでもとても重要である。 とくに重要なのはルームミラーだ。
ルームミラーは後方との距離の確認を含むいろいろな確認ができるのだが、老人でルームミラーを確認しない人が多いのはどうしてだろう。 ただし、日常の運転で、この判断、行動が遅れると感じたら、こいつは危険信号だ。
私ならきっとその段階で免許証を返納するだろう。 しかし、それもいつも自分の運転を冷静に見ているからできるのであって、それがないと判断できない。
きわめて莫大な資金と労力を必要とするが、六十五歳以上のドライバーのための本格的なドライビングのチェックシステムをつくればいい。 現在、自治体ごとに老人ドライバーの適性検査や運転指導をおこないはじめてはいるが、こいつはまだ申しわけ程度のものだ。
もっと理論的にもインフラ的にもしっかりしたシステムが必要だ。 しかも日本の運転免許を司っている警察関係者は、老人=危険日免許返納というシナリオを持っているので、いまのままではだめだ。
老人にいつまでもクルマに乗って社会活動させようという考え方でなければ、そんなことは考えられない。 目から入る情報の低下と同じように、身体感覚の衰えがある。

車幅感覚に自信がなくなってくるのだ。 人間の身体感覚のベースは肩幅で、人間の行動は肩幅が入るか否かという判断がベースになっていると何かで読んだが、この幅の感覚も衰えてくるのである。
最近、私は大きなクルマがうとましくなった。 私は職業柄、けっこう大きなクルマにも乗ってきたが、全幅1・8m以上のクルマはもはやイヤである。
東京都内では1・8m以上のクルマは極端に使いにくいのだ。 しかし、この感覚はゆっくりやれば、まだまだ十分に機能する。
少なくとも私はゆっくりやればできる。 多くの六十五歳以上の人も、ゆっくりやればできるのではないだろうか。
ま、大きなクルマでも慣れてしまえばあまり問題ない。 だからある程度、慣れるまでゆっくり走りさえすれば大過あるまい。
多くの六十五歳以上のドライバーは長さ4・4m以下、全幅1・7m以下、すなわち5ナンバー枠のクルマに乗っていると思うが、その大小にかかわらず自分のクルマのこのサイズをよくつかんでおくことが、いつまでもクルマに乗るために必要なことなのだ。 現代のクルマを楽に運転できないとしたら問題だ年老いてくると腕力の衰えも目立ってくる。
重いものを持つとき、力をこめたつもりでも、我が意に反して力が入らない。 若いときは軽々と持っていたものが、思うように持てない。
ましてやその力を持続するのはとても困難である。 そこで、いろいろな運動をやったりしているが、筋力の衰えはそうかんたんにはもどらない。
こうしていつしか歳をとっていくのだろうと思うと、寂しいかぎりである。 つくづく歳をとったと思うのは、さほど重くもないバッグを持ったときとか、力をこめて家事をやろうとしたときだ。
自分の頭ではこれしきと思っても、身体のほうが思うにまかせないのである。 ま、六十という歳はそんなものかもしれない。

私は年聞に何度も海外取材へ出るが、旅行用のトランクが重く感じられてならない。 とくにセルフバッグが多いクルマによる旅では、それがとてもつらくなる。
それもこれも歳による体力の衰えゆえなのだが、運転という作業もこのこととは無関係ではない。 クルマの運転ではじめてそれを感じたのは、数年前、マゼラーティ・ミストラルに乗ってなぜあなたは運転が苦手になったのかいたときのことだった。
このクルマはパワースティアリングではなく、ギアはマニュアルボックスであった。 クラッチが重υ感じるのは当然としても、パワースティアリング、ハンドルが重く感じるのはシヨオートマティックのクルマ以外乗れないというのは、ドライバーとして半人前である。
その日から私はジムに通い、腕と脚の筋力トレーニングに明け暮れた。 そのかいあって、まあ、なんとかマゼラーティの運転はこなせるようになった。
しかし、このマゼラーティというクルマ、運転はできても、足として使うにはやはりハンドルが重くパワースティアリングつきの新しいスカイラインGTーRぐらいであった。 結局、マゼラーティは手放してしまった。
以後、クラシックカーはあまり乗らないようになった。 もっとも、旧くても操作系が軽いクルマは多いのだが、ACコブラ427とかフエラーリ365GTB/4デイトナなど、ハンドルの極端に重いクルマにはもはや乗れないとなると、なんだか世の中の面白いクルマの一部に乗れなくなったような気がして寂しい。
ブレーキも同じである。 マゼラーティがそうであったが、旧いクルマは右足の踏力を要するのだ。
旧いフエラーリなどは相当の力を入れないと、完全な制動力を発揮してくれない。 とくにデイトナや365GT4BBあたりは、ブレーキペダルがやたら重く、相当、力をこめないと止まってくれないのだ。
フエラーリとかコブラのようなクルマでなくても、一九六0年代のスポーツカー、たとえばオースチン・ヒーリ13000とか、MGAクラスでも、けっこう力を要するクルマは多い。 そして一九五0年代、一九三0年代のクルマともなると、さらに力を要するから困る。

現代のクルマばかりに乗っているいまの仕事の上では、こいつはあまり問題はないにしても、旧いスポーツカーに乗るのは、私の愉しみなのだ。 一九二0年代のベントリィとまではいかなくても、一九六0年代のMGAぐらいは楽々と乗れなくてはいかんと思う。
ま、このことは私の趣味だからあまり問題はないのだが、一般の人が現代の少なくともここ二0年間くらいに生産されたクルマに乗れないとなると、それは問題である。 現代のクルマでも、クルマによってはハンドルもブレーキもクラッチペダルも重いものがある。
国産車ではスカイラインGTーR、マツダRX7あたりがこのむずかしいクルマの代表格だ。 もうひとつの問題は耳である。
耳が遠くなるのは怖い。 幸い私は耳はまだ大丈夫であるが、とくに一時停車の場所は注意する必要がある。
こんな場所では、私はすこしずつノーズを出すようにして、用心している。 老人はモタモタするが、それは一方では用心深いからでもあるのだ。

またT字路の合流ポイントにも注意が要る。 とくに老人は首を曲げての後方確認がめんどうになり、やりたがらぬ。
それが原因となっての事故が多いのだそうだ。 そもそも耳だけでなく、目も悪いのだから、一時停止、T字路の合流には注意してしすぎることはない。
老人ドライバーは二つに分かれる。 怖がり屋と無神経な人である。
どちらも他人に迷惑な存在だ。 フラフラはいい。
しかし、ノロノロは困るし、相手が止まってくれるのを期待されるのも大変困る。 運転というものは自分が責任をはたして、初めて相手の責任をとやかくいうことができるのだ。
よく老人で小さな接触事故を起こし、「私は悪くない」といい張る人がいるが、悪くないのなら、なぜ事故が起きたのか不思議である。 相手だけの責任で起きる事故はきわめて少ないのだから。
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